私の片想い事情 【完】
パパさんも隼人も一刀両断、弁護士を通せと断っても、お母さんは全く引くことはなく、その矛先は隼人本人へと向けられた。
大学の門の前で待ち伏せする彼女は、43歳とは思えないほどの艶やかさと美しさを保ち、ああ、隼人が美形なのも頷けると思った。
隼人の家にはお母さんの写真がない。お母さんが出て行って数年は、隼人はお母さんの写真をずっと大事に持っていたようだけど、捨てられたんだと自覚する頃には全て破り捨てたらしい。
隼人はお母さんに似た自分の顔を嫌っている。だから、隼人の顔に魅かれて寄ってくる女の子には本気にならなかった。
隼人とそっくりの顔で現れた彼女を、憎悪と嫌悪の入り混じった瞳で睨みつける隼人。
また殴りかかりそうなその腕を、私はありったけの力で抑え、一度ちゃんと話をした方がいいと隼人を説得した。
「別にあなたと今更感動の母子の対面をしたいとは思わないわ。それに母子ごっこも」
大学近くの喫茶店で着席するや否や、きっぱり言い切る彼女に、隼人を宥めるために同席した私がキレそうになり、逆に落ち着けと隼人に宥められた。
「奇遇だな。俺もあんたと慣れ合うつもりはない。あんたの息子に戻ることもな」
「あら、戻るも何も、隼人は私のお腹から産まれた正真正銘の私の息子よ。その事実は変わらないわ」
「母親だなんて思ったことねぇ」
「ふふ、昔は、ママ、ママ、と言って私の後を追いかけてきたくせに」
彼女がわざと隼人を挑発しているのはわかった。