私の片想い事情 【完】

「浮気というか、真治さんには、ずっと心に想う人がいたの。そして、一度たりとも私のことを見てくれたことはなかったわ。そうそう、その女性はあなたの良く知っている人よ」


ドクンと心臓が鳴り、嫌な予感がした。


そして、嫌な予感とは的中するもので、綾子さんは、今一緒に住んでいるじゃない、と笑った。


「そうよ、私たちの離婚の理由は静香さんよ。真治さんが彼女を忘れることができなかったから。彼が静香さんと逢瀬を繰り返したから。私だって女だもの。一番に愛しくれる男と一緒になりたかったわ」

「へぇ、だからあんたの気持ちも分かれって？」


隼人は力なく答える。その瞳は色を失い、殺伐としていた。


私は、隣にいる隼人がまるで別人のように見え、言いようのない不安に駆られた。


「別に分かって欲しいわけじゃないけど、あの時それほど私は精神的にまいっていたってことよ」

「ふっ……」


隼人が馬鹿にしたように綾子さんをあざけ笑う。


「あんた俺をバカだと思ってんのか？そんなことで、はい、そうですかって許すとでも？自分で言ったんだろう？愛はなかったって。そんな男相手にどうやって絶望的になるんだ？結局あんたも好き勝手して男作って出て行ったんだろう？」


綾子さんの瞳が一瞬驚きに染まるが、すぐに冷静さを取り戻し、クスリと笑った。