私の片想い事情 【完】
あの時、私は隼人を一人にするべきじゃなかった。
暴れてでも、殴られても、隼人にすがり、隼人が必要なんだ、と隼人は一人じゃないんだ、と言ってあげるべきだった。
どうしようか迷ったけど、綾子さんとあったことをパパさんと静香さんに話した。
二人は狼狽し、静香さんも珍しく取り乱したけど、隼人が帰ってきてくれることを信じて、待つしかなかった。
隼人は、大学もプールのバイトも休んでいた。
隼人が心配で性がなかった私は、パパさんや静香さんのように隼人を待つことなんてできなくて、隼人がよく行く居酒屋やバーを転々と探した。
恥を承知で、昔隼人と関係があった女の人も尋ねた。
隼人がいなくなって6日目にしてやっと、古い居酒屋のカウンターで酔いつぶれる隼人を見つけることができた。
隼人は隣にいる女性にしなだれかかるように甘え、今にもそこでコトを始めそうな勢いで、お店の人も困っていた。
私は、隼人の身体を女の人からべりっと剥がし、帰ろう、と腕を取った。
隼人は私のこともわからないくらい酔っていて、相手の女の人が文句を言ってきたけど、私はただただ頭を下げて隼人を返してもらった。
こんな状態の隼人を家に帰すこともできず、とりあえず、タクシーにそのでかい図体を押し込み、運転手さんの肩も借りて、隼人を私のアパートまで連れてきた。