私の片想い事情 【完】
「中々来ないわね?」
「今日からなんですか?急ですねぇ」
「ううん、今日はシフトの調整と挨拶だけよ。1時には来るってマネージャーが言ってたけど……」
亜紀さんがチラっと時計を気にする。
デートでもあるのかな?と思っていると、不機嫌そうにポツリとつぶやいた。
「私、竜也とデートなのに」
ああ、やっぱり、と呆れた顔で亜紀さんを見遣れば、「何よ」とすごまれた。
竜也さん。3~4人いる彼氏のうちの一人だったと思う。
先週は、違う名前の男の人とデートだったような気がする。
「亜紀さん、いつも男の人が違う名前だから覚えきれません」
「あら、一人紹介しようか?デートする?」
「しません!」
「クス、冗談よ。そんな固いこと言うからみなみは未だに処女なのよ」
「亜紀さん!事務所でそんなこと……」
真っ赤な顔で睨むわたしを、「ごめん、ごめん」と笑いながら下から覗き込んでくる。