私の片想い事情 【完】
「二人とも子供じゃないんですから。準備全然できてないじゃないですか!?」
じゃれ合っている(ように見える)二人を嗜めるように私は忠告する。
「みなみ、何笑ってんだ?お前も一緒に泳ぐか?ああ?」
鬼マネにすごまれ、私は、何でもございません、と押し黙った。
「真さん、遊んでいる暇はありませんよ。もう生徒が来ましたよ~」
マネージャーの意識が逸れた瞬間、瀧川君は、そのしつこい腕から逃れ、そのまま生徒の方へと駆け寄って行ってしまった。
残されたのは、おどおどする私一人。
マネージャーは、チッと舌打ちをしたかと思うと、私の方へと振り返る。
うげぇ!こ、こわっ。
私も、生徒の方へ行こうとそおっと踵を返すと、予想外の穏やかな声が降ってきた。
「なぁ、みなみ」
その優しいトーンにはい?とつい歩みを止めて振り返ると、マネージャーは真面目な顔をしてJOの選手ファイルを開いて見せた。
「これでわかったか?俺が何故瀧川をお前につけたのか?そして今俺がお前のクラスにヘルプに入るかも」
私は、ハッとしてマネージャーが持っている選手ファイルを受け取る。
「言っている意味はわかるな?」
「はい……。高橋君ですね?」
選手ファイルを開けば、高橋君のページに附箋が貼られ、瀧川君の字で細かくメモが書かれていた。
私は、瀧川君が初めてクラスに出た日のことを思い返した。
やけに高橋君のことを気にかけていた瀧川君。
多分、昔の自分と重ねていたんだろう。