私の片想い事情 【完】
「先週の金曜日もお父さんが来られた。メニューが甘すぎるから担当を変えろと言われた」
「そんな……」
「4年生以下は、選手コースを設けてない。担当を変えるか、高学年の選手コースに入れろとゴリ押しされてな」
「す、すみません」
「いや、お前はよくやっている。これ以上彼に無理させると遅かれ早かれ瀧川のように故障する。特に高橋君は今成長期だ。身長も月に1センチ単位で伸びているだろう?こういう時期ほど、身体を酷使したトレーニングを続けると、後から身体が悲鳴を上げる」
マネージャーは、高橋君がプールサイドに入ってくるのを確認すると、声を落として続けた。
「今のところ、高橋君に変わった様子はないか?」
「はい。多分大丈夫だと思います」
「とにかく、父親は俺が対処しておくから、みなみは、高橋君の健康面と精神面にも気をつけてやってくれ」
「はい、わかりました」
「今日は、俺が高橋君を見る。父親も練習を見学していることだし、一応デモンストレーションとして俺が見ていることにしておこう」
「はい、お願いします」
私は、納得できなかったが、何も言わずに頭を下げた。
指導二年目の私には役不足だ。父親の対応すら満足にできない。
項垂れていると、マネージャーが、あまり気にするなと頭の上にぽんと肘を置いてくる。
「マネージャー、私の頭は肘置きではありません!」
私は、泣きたい気分なのをこらえ、マネージャーの手を押し返し、精いっぱいの笑顔を高橋君に向けた。