私の片想い事情 【完】
「高橋君、今日からしばらくの間、笠原マネージャーが高橋君を見てくれるから」
アップを始めた高橋君を呼び止め、私はマネージャーの意向を伝えた。
「えっ?本当に?」
「うん。JOまでの間だけど」
「俺、みなみ先生がいいなぁ。笠原コーチ怖いんだもん」
私がいいと言ってくれる高橋君に、大した意味はないと分かっていたけど、少し救われた。
「今の笠原コーチは昔と比べるとすごく優しいわよ」
「あれで~?」
「そう、あれで。私が教えてもらっていたときは、イケメンの鬼コーチって言われていたもの」
「イケメンって~」
私たちは、マネージャーを指さし、クスクスと笑いあう。
「ねぇ、高橋君。学校で水泳記録会の練習もしているでしょう?またメニューの内容を教えてくれる?」
「うん、いいよ。今日も放課後に練習あったんだけど、へとへとだよ」
「そう。あまり無理しないでね?」
「大丈夫、疲れたけど、俺まだ頑張れるし。あっ、でも笠原コーチかぁ。みなみ先生なら頑張れるのに」
愛らい彼の笑顔に、私の胸はチクリと痛む。
彼は本当に泳ぐことが好きなのだ。