私の片想い事情 【完】
「携帯?財布?それともまた水着を洗濯機の中に入れっぱなしにした?」
「おい、俺は小学生か?」
「だって、隼人この3つよく忘れるじゃない?」
「うるせー」
ふくれっ面の隼人は、ああ、あったと言って、生徒ファイルを手にした。
「え?家で仕事でもする気?隼人が?」
「あのなー、俺だってたまにしますけど?マネージャーに選手コースに移行させる生徒をピックアップしとけって言われただろう?」
「ああ、そうか」
膨れる隼人がかわいいと思いつつ、結構普通に話ができている自分にホッとした。
「みなみのクラスは何人か上げるのか?」
隼人がパラパラとファイルを捲りながら聞いてくる。
「う~ん。私は低学年クラスが主だし。高学年のクラスも、隼人のクラスの生徒の方がタイムいい子そろっているしね。いないと思う」
「ふーん。なんか最近マネージャーのプレッシャーが半端ねぇよ。ちびっこコースはがんがん入れられるし。来年25だろ?上級コーチ資格に向けて気合入れろってうるさいんだよ」
「それだけ期待されているんだよ。隼人はすごいよね。飛び込み専門だったのに、競泳もできるなんて。教え方も上手いし保護者にも人気で羨ましいよ」
「どうしたんだ、みなみ?」
つい口に出してしまった愚痴に、隼人が怪訝そうな顔で聞いてくる。