私の片想い事情 【完】

「あっ、ううん。何でもない」


前までだったら、「隼人、聞いてよ」って高橋君のことも相談できたけど、今はそんな風にできない。


隼人のお世話係を卒業するって言っておきながら、自分が隼人に甘えていちゃダメだ。


疲労感と共にソファで項垂れていると、ファイルを片手に隼人が私の横に立った。


「みなみ、帰んないの?」


落ちてくる大きな影に、私の身体は一気に緊張でピキーンと硬直する。


普通に話せていると安堵した矢先にこの焦り。


至近距離になると全然ダメじゃん、と自分を叱咤するけど、心臓のドキドキは半端ない。


「う、うん。帰るんだけど、今日はやけに疲れて……」


視線を合わせないように、そさくさとソファから離れ、戸締りをしてしまった受付窓の鍵を確認する素振りをする。


ああ、情けない。


こういうときどんな態度取ればいいのか全く分からない。


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