私の片想い事情 【完】
私がもたもたしていると、隼人の苛立った声が聞こえてきた。
「みなみ、戸締り終わったんなら早く帰ろうぜ」
「あっ、うん。ごめん」
私は、慌てて自分の荷物をまとめる。
カバンにファイルを思いっきりつめ、席を立とうとしたとき、そのかばんは、隼人にひょいっと奪われた。
「重めーな。何詰め込んでんだよ」
「あ、ありがと」
ぶつぶつ言いながら隼人は、事務所の出口へと向かう。
私は、あれ?と思った。
朝でこそ、隼人の態度がぎこちないと思ったけど。
私に話しかけられて動揺していたようにも見えた。
私のことを心配して寝れなかったのかな、とかちょっと喜んでみたりもしたのに。
今の隼人君、すごーーーく普通なんですけど?
どこか腑に落ちない感じに、私のドギマギしていた心が落ち着いてくる。
「みなみ、何してんだよ?もう10時だぞ?」
「ご、ごめん。今行く」
私は、何故自分が隼人に謝っているのかもわからず、慌てて事務所を施錠し、隼人の後を追った。