私の片想い事情 【完】
「は、隼人!かばん、返して!」
「みなみ、悩んでいることがあるんだろう?さっきも何か言いたそうにしてたし」
「えっ?」
「高橋君のこととか、何で俺に言わないんだよ?高橋君は3年まで俺のクラスにいたんだし、俺に相談しろよ」
真上から見下ろされるようにすごまれ、私は何も言えなくなる。
「愚痴聞いてやるから、ラーメン行こうぜ?」
隼人は、ほら、と言って手を差し出してくる。
隼人、気づいてくれてたんだ。
高橋君のことはあえて隼人には言ってなかった。
隼人自身、夏休みの間は幼児教室が毎日のように入っていて忙しかったし、相談する機会がなかった。
それに、色々なことがあって、高橋君のことは頭の中から抜け落ちていたのも事実。
何だかんだ言って隼人は私のことを見ていてくれる。
ああ、だからご飯に誘ってくれたんだ。
じーんと心がほだされそうになり、隼人の手を取ろうとしたその瞬間、私は、はっと現実に引き戻された。
待て待て待て、と急ブレーキをかけるように、自分自身に待ったをかける。