私の片想い事情 【完】

「もう、宮本さんったら、浅井さんをこれ以上いじめないの。やっと体調戻ったのに、また倒れちゃうわよ?浅井さん、もう、大丈夫なの?」


助け舟を出してくれた西本さんの背に後光が見える。


私はうるうる感動して、はい、大丈夫です、と西本さんに笑顔を向けた。


ほら、立ってと手を引かれ、大きなその背に隠れるように、亜紀さんから距離を取った。


「亜紀さん、本当に申し訳ありませんでした。倒れるなと釘刺されていたのに……」


私は、平身低頭で、菓子折りを前に差し出した。


「亜紀様の大好きな千疋屋の果実ゼリーとシャーベットでございます」


菓子折りに一瞥をくれたかと思うと、亜紀さんは、よろしい、と言って私の顔を上げさせた。


これは、女王様と下僕プレイの何でもなく、私はひたすら亜紀さんのご機嫌を取っている。


「それで、本当に体調はもういいの?」

「ハイ……明日から通常勤務に復帰します」

「それにしても、連絡ひとつよこさないって、薄情よねぇ?」


冷ややかな嫌味に、私は、うっ、と言葉を詰まらす。


だって、絶対に文句言われると思ったし、隼人の家にいるなんてばれたら、どんな責苦を浴びさせられるか……


視線を彷徨わせてごめんなさい、と頭を下げる私に、亜紀さんは意外にも優しく頭を撫でてきた。


首がもげる突っ込みを覚悟していたのに―――




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