私の片想い事情 【完】
「良かったわね、隼人とうまくいって」
「―――え?」
今のは空耳?と言いたくなるような優しい声色で亜紀さんは続ける。
「大体のことは聞いたわよ。大変だったけど、今回のことはお互いに荒療治で良かったのかもね。ホント、イライラする二人だわ」
「あ、亜紀さん!」
瞳を潤せ感動する私に、亜紀さんは温和に語りかける。
「みなみが幸せならそれでいいのよ。隼人といれば、これからもっと苦労すると思うけど、みなみがそれでいいなら私は何も言わないわよ。バカに塗る薬はないって言うじゃない?箸にも棒にもかからないとも言うかしら?」
かなりけなされているけど、私は感動に打ち震えていた。
だって、絶対に大バカ者、と怒られると思っていたから。
バカと言われたことには変わらないけど、それでも、私は、亜紀さーーーん!と彼女に思いっきり抱きついた。
すり寄る私を、暑苦しいと叩く亜紀さんは、どこか優しく、あの絶望の朝に、部屋に泊めてくれたときと同じように、ホントバカねぇ、と笑った。