私の片想い事情 【完】
でも―――
今ならわかる。
隼人なりにすごく苦しんでいたんだ。
どうしても女の人を信じることができなかった隼人。
家族にすら一歩線を引いている隼人が、自らその殻をこじあけることなんてできなかった。
一歩踏み出すことができれば、隼人の世界は変わったかもしれないのに、その一歩がずっと踏み出せなかった。
もし、あの時、私が隼人を突き放していたらどうなっていたんだろう?
瀧川君を選んでいたら―――
そう思うと、身震いがするほど怖くなった。
『隼人の女性不信は深刻よ』
亜紀さんが言ったことが私の脳内でリフレインされる。
そうだね、亜紀さん。
私は自分の気持ちで精いっぱいで、隼人が好きすぎて、本当の隼人を見ていなかったのかも。
傷ついた隼人を私が一番傍で見てきていたのに。
臆病で繊細で、人一倍寂しがりなことは、私が一番良く知っていたのにね。