私の片想い事情 【完】
「あ、まぁ……。高3の受験のときに辞めました」
そう答える瀧川君の表情は、何だか、少しバツが悪そうで、いつもの飄々とした雰囲気とは違っていた。
私、聞いちゃいけないこと聞いた?そんな気持ちが顔に出ていたのか、瀧川君は元の生意気な表情に戻り、また距離を詰めてきた。
「クス……俺のこと知りたくなった?」
「はぁ?」
「ほら?何でも聞いてください。」
手を広げておいでって至近距離でにっこり笑われるもんだから、つい「ハイ」って頷きそうになる。
何だか瀧川君に慣らされているようで、ムカつく。
「バカじゃないの」
「アハハ……俺ってここ一週間先輩にバカって言われてる」
「くだらないことばかり言うからよ」
ダメだ、調子が狂う。
何でこの子はこんな無防備にかわいく笑うんだろう?その技術を少しでも分けてもらいたい。