理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~
社会人になってから、ピルを服用している。


一度だけ…

二人でお酒を飲んで酔っぱらって、避妊し忘れたことがあるからだ。


湧き上がる後悔と、妊娠の恐怖心に耐え切れず、子宮ガン健診を受けるという名目で、産婦人科を受診した。


産婦人科医は、想像していた女医さんでもなく、オジサンでもない、30代前半位の若い男性で…

そのコトが、恥ずかしさを助長させた。


結果として妊娠してはいなかったものの、診察後にドクターから、

「性交渉の時、痛くて大変でしょ?」

と、悩みをスバリと言い当てられて驚いた。


「なんで、そのコトを…」

思わず、緊張で震える声で尋ねると、

「膣内がね、ちょっと狭いんだよ。

もちろん、自然分娩できる程度だから大丈夫だけど…
出産自体は大変かもしれないね」

思ってもみない事実に、ただただ驚くばかりだった。


そしてドクターは…

『リラックスと潤滑』で、痛みが緩和出来ることを教えてくれた。

ナマよりもゴムを使った方が、ゼリーのお陰で、痛みが少ないことも。


診察ついでに、同じ恐怖は二度と味わいたくないからと、ピルも処方して貰うコトにした。


「避妊目的だけでなく、性病予防の為にもゴムは大事だぞ!」

念を押すドクターに、

「はい。
ありがとうございました」

頭を下げて退出しようと立ち上がると…

「男からみれば、魅力的な作りなんだから、大事にしてもらえよ?

折角の機会だから、味見を兼ねて、俺が実技指導してもいいけど?」

からかうような口調でそう言われ、

「けっ、結構ですっっ!!」

恥ずかしさで赤らんだ顔のまま、バタンと勢いよく診察室のドアを閉めたコトを思い出すと、今でも恥ずかしさで顔が熱くなってしまう。


そして…

ピルを服用し始めたと話したコトで、洋介は避妊しなくなり、私の痛みが和らぐコトは無くなった。


そういえば…

初めて洋介に抱かれてから、しばらくは、

「痛い」

と、正直に口にしていたけれど…

「俺のがデカイからかも…
ゴメンな」

何度目かの時、すまなさそうにそう言うのを聞いてからは…

いつまでも言い続けるのは、洋介に悪いような気がして…

代わりに、艶技という嘘をつき始めたんだった。

一度ついたら、つき続けなければならない嘘を。
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