理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~
「今回の件やけどな…

週刊誌にネタを売ったり、暴露本を出すつもりやったら…
ウチでネタを買い取らせてもらうよって…

お好きな額を、言いなはれ」

顎をしゃくって促されるも…

「…嫌です。
一円も要りません」

と、首を横に振って、断る。


イッセイとの思い出を…

お金になんか、代えたくない。


お金なんかで、無かったコトにしたくない。


私だけの大切な思い出だから。


けれど…

「ナンボや?」

もうワントーン落ちる声色は、それすらも許そうとしてくれない。


「…大丈夫です。
私、家族にも友人にも、誰にも、何も話したりしませんから。

話したところで、信じて貰えるような話じゃないですし」

信用して貰えれば、思い出まで奪われなくてすむかもしれない…

そんな僅かな望みに賭けて、約束する。


「アンタもよぉ知ってる通り、逸晴は女性を甘やかすのも、可愛がるのも手慣れとるし、上手にエエ気分にさせてくれるやろ?

そやから言うて、調子にのって…
既成事実で子供つくって、責任取らせて結婚…
やなんて、そんな夢は見ん方がエエ。

勘違いして夢破れた女が、ぎょうさん居てるしな。

結婚が責任やなんて、ウチの人間は誰も思うてへんし…
どこの馬の骨ともしれんような女の一人、二人、孕ましたところで、その程度のコトに義理立てするようなアホもおらん。

わかるな?」

容赦のない秀晴さんの言葉に、悔しくて、悔しくて、涙が零れる。


どうして、こんな仕打ちを受けなくちゃならないんだろう。


理不尽さに、悔しさが増すけれど…

バッグからハンカチを取り出して、素早く拭く。


こんな惨めな姿、イッセイには見られたくない。

グッと涙を堪えて、なんとか笑顔を作り…

「はい。何も望みません。
全て、旅行中だけの夢です」

と、言うと…

「そうや。
アンタはエエ子や。
…頭のエエ子や」

ようやく秀晴さんも、笑顔を見せた。
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