理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~
「それにしても、いくら一目惚れや言うたかて…

名前も歳も知らんと、キスしたり、抱き合うやなんて…」

葉子さんの言葉に、再び小さくなり『すみません』と呟きながら俯く私を余所に…

「なんや、あの頃の私達みたいやわぁ」

キャッキャと、はしゃぎ出した葉子さんは…

「あの時の秀ちゃん…
強引やったけど、男らしゅうて、カッコ良かった…」

文末にハートマークでも付きそうなくらい、ウットリとした顔で秀晴さんを見つめ…

「あの日の葉ちゃんは、セーラー服姿がよう似合うとって…
めちゃめちゃ可愛かったなぁ」

その熱い視線に応じるように、秀晴さんもまた、優しい眼差しで葉子さんを見つめ返す。


「可愛かったんは、あの頃だけ?」

「今も充分に可愛いらしいけど、大人になった分、綺麗さが増したわ」

「秀ちゃん…」

「葉ちゃん…」

見つめ合った、そのままに…

ゆっくりと唇が重なりあうと…

まさに『二人の世界』ってカンジがして、身の置き所がない。


隣に座るイッセイが…

「俺、今まで散々、兄貴達には呆れてきたけど…

ひょっとして、昼間の清水寺での俺って、こんなカンジやったん?」

苦々しい表情を浮かべて、恐る恐る尋ねてくる。


「もっとヒドかったかも」

そう、からかうつもりで答えると、一瞬だけ眉を潜めたけれど、直ぐに笑顔を浮かべ…

「まぁ、エエか。
アヤもかなり喜んどったしな」

なんて言うから…

「喜んでません!」

つい、大きな声が出てしまって…

「五月蠅いな。
雰囲気ぶち壊しや。

なぁ、葉ちゃん、早う帰ろ?」

眉間にシワを寄せたお兄さんに、頬を染めて頷く葉子さん。


葉子さんの手を引いて、秀晴さんが立ち上がろうとすると…

「葉子さん、ちょっと待って下さい」

イッセイが引き止め、

「明日は、お忙しいですか?
何ぞ予定でもあります?

俺、明日は東京なんで…
迷惑や無かったら、アヤをお願い出来ませんか?」

明日、イッセイが東京に行くことも驚いたけれど、それ以上に急な展開に戸惑ってしまって、イッセイと葉子さんの顔を交互に見てしまう。


けれども、葉子さんは驚く風でもなく、

「ウチは構へんよ。
丁度、秀ちゃんも名古屋やし。

その代わり、晩には秀ちゃんと2人っきりにしてな?

彩ちゃん、宜しゅうね」

ふんわり微笑みを浮かべるその姿に、

「はいっ。
こちらこそ、宜しくお願い致します」

つい、元気よく返事をして甘えてしまう。


正直…
秀晴さんには、二度と関わりたくは無いけれど、葉子さんなら、心配なさそうだし…

一人で過ごすよりずっと楽しそうな気が
して、思い切って頭を下げてみた。
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