理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~
イッセイが急にヘンなコトを言い出すから、胸の動悸が治まらない。


胸に手を当てて、深呼吸してみるけれど、あまり効果は無くて…

ううん、むしろ…

ホテルが近づくに連れて、どんどん激しくなっている。


ホテルの地下駐車場に到着すると、駐車スペースに車を止め、鍵を手に車を降りた篠原さんは、後部座席のドアを開けてイッセイが降りるのを待ってくれる。


イッセイも、篠原さんがシートベルトを外すのに合わせ、自分と私のシートベルトにも手をかけて外してくれ、タイミングを合わせて車から降りる。


「篠原、今日はホンマ無理言うてすまんかった。
おおきに、感謝してるで」

開いたドアから一人で後部座席を降り、頭を下げるイッセイに…

「そないな勿体ないコト、お止め下さい。
私等は、いつも通りお迎えしただけです。

お客様に喜んで頂けてこその、商売ですから」

ドアを隔てて深々と頭を下げると、鍵をイッセイに手渡して、そのまま篠原さんは帰っていってしまった。


『ありがとう』と、お礼を言う間もなく姿が見えなくなり、

「私もお礼、言いたかったのに」

と、呟くと、イッセイが再び後部座席に戻ってきて…

「気ぃ利かせたんやろ」

と言いながら、あっと言う間にシートに押し倒される。


「ええっと…これは…?」

?マークが目の前を飛び交う私に、イッセイがニコニコしながらのしかかり…

「なんや、真っ赤な顔しながら…
何度も胸に手ェ当てて、俺のこと誘ってたみたいやから…」

なんてコトを言い出す。


「誘ってません!」

否定してみても…

「えっ!?
触って欲しかったんちゃうん?」

わざとらしく、驚いてみせる。


「違います。
あれは、胸がドキドキしてたから…」

「ドキドキする程、期待してくれたん?」

私の話なんて、全く聞き入れてくれなくて…

「…だから、違うってば」

反論する声が、弱々しくなっていく。


「うんうん、分かるで。
恥ずかしゅうて素直になれひんだけやんな?」

「だから、も~」

それでも、もう一度、否定しようとしたのに…

開かれていた唇に、突然…

イッセイの舌が押し入り、私の言葉の全てを奪う。


激しく暴れながら…

私の中にあった、否定の言葉は、イッセイの舌に舐め取られ…

代わりに与えられたのは…

静かに車内に響く水音と…

「んんんっっ…はぁっ…」

鼻に抜けるような、甘い吐息。


翻弄され、抵抗を見せなくなったコトで…

ゆっくりと離れた唇に…

「どうして…?」

と、問いかけると…

ニヤリと悪い笑顔を見せたイッセイが…

「あんまり『違う』『違う』って騒いどるから…
あー、順番が違うのか…って、気付いてん。

やっぱり、おっぱいの前にチューぐらいしとかな…
がっついてる中学生みたいで嫌やったんかな?
と、思て」

なんて言うから…

トロケていたハズの目が、思わず全開になってしまうほど、面食らってしまった。
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