理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~
「逸晴くんの気持ち、分かってもらえた?
分かりはったんなら、考え直して…」

ティッシュを差し出しながら、声をかけてくれる 、かの子さんに首を横に振る。


「イッセイの気持ちも、真意も分かりません。
だってそれは、イッセイの口から聞いた言葉じゃないから」

そう、イッセイの口から聞いたワケじゃないのに、ぬか喜びなんて出来ない。

イッセイのお陰で傷の癒えた傷心旅行なのに…
もう一回傷つくなんて、そんなの嫌だもの。


葉子さんとかの子さんは、私の強情なネガティブぶりに驚いたのか、顔を見合せている。


「せやけど、彩ちゃん今、泣いてたやないの。
それって、逸晴くんの気持ちが伝わったから違うのん?」

焦ったような口調のかの子さんに首をふり…

「これは…秀晴さんの真意が分かったからです。

昨夜、実は…
秀晴さん、私にすっごく意地悪なコトばかり言ってきたんです。

『お金が目当てなのか?』
とか…
『妊娠しても、結婚が責任だなんて、ウチでは思われないから夢を見るな!』
だとか。

しかも、イッセイや葉子さんがいない時に、すっごく悪人顔で言うから…
正直、大嫌いになりました。

でもそれって全部、イッセイの為だったんですよね?


イッセイを護るために、あえてそうなさっていたんだと思ったら、嫌いだなんて思ってしまったコトが、なんだか申し訳なくなってきて…

葉子さん、貴女の大切な旦那様なのに、そんなコト思ってしまって、ごめんなさい」

頭を下げる私に、葉子さんは優しく微笑み…

「彩ちゃん、おおきに。
それから…
秀ちゃんのした仕打ち、ホンマにごめんなさい。

あれは、秀ちゃんなりの試験のつもりやったんや。

彩ちゃんがどない答えはんのんか、人間性を見極めようとしてたんよ。

そして実は、私もそれに協力しててん。

あのタイミングで席を立ったんは、偶然やないの。
一緒に騙して、ごめんなさい。

けどな、彩ちゃん。
秀ちゃんは、彩ちゃんのコト、褒めててん。

真っ直ぐな凛とした態度と、逸晴くんを大切にしてくれる気持ちを喜んでたわ。

せやからこそ、今日の誘いを止めへんかったんやし、本家へ挨拶に来てくれはるんも待ってるんよ。

ウチらは、心から彩ちゃんの応援させて貰うさかい、帰ったりしたらアカンえ」

ギュッと手を握って、励ましてくれた。
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