理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~
「背丈は、逸晴くんの方が数センチ高いけど、サイズは同じ位のはずや」

という、葉子さんにサイズを確認してもらい、半袖と長袖の二枚を買う。


長袖は、同じ空色だけれど、襟と袖が白でカフスが出来るデザイン。

まるで、空に浮かぶ白い雲のようで、こちらは一目惚れして決めた。


会計を済ませ、ラッピングしてもらい…
ドコでお茶にしようかなんて話ながら、店内の見取り図を見ていると…


「葉ちゃん!」


葉子さんを呼ぶ声がして振り返ると、そこに居たのは…

葉子さんと同じ顔を持つ、昨日の和装美人。


名前は確か…

「あら、優ちゃん」

そう、優香さんだっけ。


「葉ちゃん、今日は買い物なん?
秀晴くんの夏物?」

優香さんは、昨日と同じように私を視界に入れずに喋る。


「残念。今日は付き添いなんよ。
彩ちゃんには昨日、清水坂で会うたんよね?」

「昨日?あぁ」

一ほんの瞬だけ、眉を寄せた優香さんは…
次の瞬間にはもう、ニッコリと私に笑顔を向けながら、

「ご挨拶が遅れて申し訳御座いません。

私、葉子の姉で、讃良 優香(サガラ ユウカ)と申します。

実家が、能の金阿弥流(コンナミリュウ)讃良家と申しまして、同じ能楽師というご縁から簓流狂言・笹森伊之助家の皆様には、普段から大変御世話になっております。

特に、秀晴くん逸晴くん兄弟には、歳が近いこともあって、若い時分にはよう遊んでいただきました」

突然の丁寧な自己紹介と、見惚れるほど美しい立ち振る舞いに…

「こちらこそ、挨拶が遅れてすみません。
あっ、あの…坂本彩です。
宜しくお願いします」

頭を下げるのが精一杯だった。

例え冷静だったとしても、自信を持って紹介出来る家柄でもなければ、肩書きも無いのだけれど。


「堅い挨拶は、もうしまいにして…な?

優ちゃん、ウチら今からお茶にしよ思ててんけど、一緒にどう?」

葉子さんが誘ってしまったコトに、なんだか嫌な予感がして…

断ってくれないものかと思いつつ、恐る恐る目線を向けると、アッサリと…

「そうやね。
折角やから、袱紗でも食べていこうかしら?」

と、言い出してしまい…

「それエエなぁ。
ほな、ウチも袱紗にするわ」

ニコニコ嬉しそうな葉子さんの様子から…
どうやら、お店とメニューが決まったらしいコトに気づいた。
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