理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~
「秀ちゃん、1本早い新幹線で帰って来れるて。早う会いたいわぁ」
ウキウキと頬を赤く染めて、喜びいっぱいの葉子さんは、自分の隣の空いた席を見て
「あら?優ちゃん、帰ってしもたん?
アヤちゃんを一人にせんでも…もうちょっと待っとってくれてもエエのに」
プゥッと頬を膨らませながら、席に座る。
「…どうして、あの人をお茶に誘ったりしたんですか?」
抑揚のない私の低い声に、サッと葉子さんの顔が曇り
「何があったん?
もしかして…何もかも聞いてしもたん?」
と、不安げに尋ねる。
「…はい。
イッセイと…
イッセイと優香さんって、お付き合いなさってたんですね」
デマだと心のどこかで言って欲しくて、すがる様に葉子さんを見つめた。
けれど、返ってきたのは…
「でもね、10年も前の話やわ。
優ちゃんは、結婚して男の子3人のお母さんやし…
逸晴くんかて、彩ちゃんがおる。
せやろ?」
私を慰めるために、取り繕おうとしてくれる言葉だけで、否定の言葉は返ってこない。
その言葉は、優香さんの話が真実だと裏づけたも同然で…
私の心は打ちのめされる。
「私は…
私は、イッセイとは付き合ってません。
『好きだ』って言われたわけでも無いし…
ただの…ただの…
躰の関係でしかありません」
ガマンしていたのに、悔しさと、セツナさで涙が零れ出す。
私に…優香さんに、嫉妬する権利なんか無い。
イッセイが優香さんにベタボレだった、その過去は書き換えられないし…
馬の骨呼ばわりされる程度の私なんかでは、結婚の約束をするほど思いあっていた二人の間に踏み込めるような立場でもない。
恋人だったと誇らしげに言える香さんと違って、私はただのアソビ相手で…
自分の立場もわきまえずに沸き起こってくるこの感情に、虚しさでいっぱいになる。
「そないなコトあらへんて。だって…」
ハンカチで私の顔を拭おうとする、葉子さんに首を振り、
「もう…私を買いかぶらないで下さい。
ヘンに慰められたり、期待を持たせるようなコト言われても辛くなっちゃいますから。
いいんです、別に、もう…
私は、ただの観光客なんです。
今だけ贅沢なを見せてもらってる、それだけで充分ですから」
無理に笑顔を作って、涙を拭い…
「せっかくだから、頂きますね」
器に残っていた袱紗を、再び口に運ぶ。
「優香さん『御餞別には足りないけど』なんて言って、ご馳走して下さったんですよ。
勘違いなのに、あはは」
聞かれてもいないコトをベラベラと喋りながら、どんどん口に押し込むと …
抹茶のほろ苦さが、この恋とは呼べない関係の味のような気がしてきて…
再び込み上げる涙が零れ無いように、グッと天井を見上げた。
ウキウキと頬を赤く染めて、喜びいっぱいの葉子さんは、自分の隣の空いた席を見て
「あら?優ちゃん、帰ってしもたん?
アヤちゃんを一人にせんでも…もうちょっと待っとってくれてもエエのに」
プゥッと頬を膨らませながら、席に座る。
「…どうして、あの人をお茶に誘ったりしたんですか?」
抑揚のない私の低い声に、サッと葉子さんの顔が曇り
「何があったん?
もしかして…何もかも聞いてしもたん?」
と、不安げに尋ねる。
「…はい。
イッセイと…
イッセイと優香さんって、お付き合いなさってたんですね」
デマだと心のどこかで言って欲しくて、すがる様に葉子さんを見つめた。
けれど、返ってきたのは…
「でもね、10年も前の話やわ。
優ちゃんは、結婚して男の子3人のお母さんやし…
逸晴くんかて、彩ちゃんがおる。
せやろ?」
私を慰めるために、取り繕おうとしてくれる言葉だけで、否定の言葉は返ってこない。
その言葉は、優香さんの話が真実だと裏づけたも同然で…
私の心は打ちのめされる。
「私は…
私は、イッセイとは付き合ってません。
『好きだ』って言われたわけでも無いし…
ただの…ただの…
躰の関係でしかありません」
ガマンしていたのに、悔しさと、セツナさで涙が零れ出す。
私に…優香さんに、嫉妬する権利なんか無い。
イッセイが優香さんにベタボレだった、その過去は書き換えられないし…
馬の骨呼ばわりされる程度の私なんかでは、結婚の約束をするほど思いあっていた二人の間に踏み込めるような立場でもない。
恋人だったと誇らしげに言える香さんと違って、私はただのアソビ相手で…
自分の立場もわきまえずに沸き起こってくるこの感情に、虚しさでいっぱいになる。
「そないなコトあらへんて。だって…」
ハンカチで私の顔を拭おうとする、葉子さんに首を振り、
「もう…私を買いかぶらないで下さい。
ヘンに慰められたり、期待を持たせるようなコト言われても辛くなっちゃいますから。
いいんです、別に、もう…
私は、ただの観光客なんです。
今だけ贅沢なを見せてもらってる、それだけで充分ですから」
無理に笑顔を作って、涙を拭い…
「せっかくだから、頂きますね」
器に残っていた袱紗を、再び口に運ぶ。
「優香さん『御餞別には足りないけど』なんて言って、ご馳走して下さったんですよ。
勘違いなのに、あはは」
聞かれてもいないコトをベラベラと喋りながら、どんどん口に押し込むと …
抹茶のほろ苦さが、この恋とは呼べない関係の味のような気がしてきて…
再び込み上げる涙が零れ無いように、グッと天井を見上げた。