理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~
「秀ちゃんと付き合い始めたある日…
たまたまお家に遊びに行く途中、道ですれ違ぉたお義母様が、

『今日は、逸晴もカノジョ連れて来とるみたいやで』

って、教えてくれはってん。


秀ちゃんが、誰も居ないと思いこんでるフリしてな、からかいに行くつもりやってけど…
逸晴くんの部屋から出てきたのは、優ちゃんやったんや。

びっくりしたわぁ~。
な~んも聞いてへんかったし。


元々、優ちゃんと秀ちゃんが仲良しで、家に入り浸ってたコトから知り合うたらしいけど…
兄弟・姉妹同士で出かければ親にも世間様にも言い訳が立つし、お互い助かる面も多くて、よう一緒に遊んだわぁ。

特に逸晴君は、国営放送がらみでテレビの仕事が増えだした時期やったから、忙しい逸晴くんを3人で遊びながら待ったりしてな。

まぁ、逸晴君のファンに逆恨みでもされたら大変やってコトで…
当事者の優ちゃんはもちろん、同じ顔のウチまで間違われて危害が及ばんようにいう、二人の気遣いもあったんやけど。


せやけど、ウチはその善意を…
心のどこかで、秀ちゃんと優ちゃんの仲を疑うてたの。

『ホンマは、ウチと逸晴君が隠れ蓑なんやないか』
って。

ウチ、ホンマは知ってたんや…
優ちゃんに好きな人がおるコト。

電話で楽しそうに話してる相手が…
学校で気の会う友達だって言ってた相手が…
秀ちゃんやったってコト。

せやけど、ウチも秀ちゃんを好きになってしもて…
それを、気づいてへん、何も知らんフリしてたんや。
ズルいやろ?


そうして手に入れたコトが、いつも後ろめたくて…
『いつか秀ちゃんに愛想つかされるんやないか』
『いつか優ちゃんが奪い返しに来るんやないか』
その後ろめたさから生まれた不安に耐え切れへんようになって、秀ちゃんに気持ちをぶつけてしもうて…

『ウチと優香、どっちが好き?
どっちが大事?

ウチは…
秀ちゃんが優香と、ウチとは出来んひんような冗談言うたり、じゃれ合うてるのんを見るたび、胸が苦しゅうなる。
秀ちゃんにホンマに必要なんは優香なんやないの?
逸晴君を口実にして、ホンマは優香に逢いたいんと違う?』

とんでもない、言いがかりやろ?
秀ちゃんは、なぁ~んも悪ぅないのに。
 
せやけど、秀ちゃんは優し過ぎるから…
ウチが不安に思わんよう、考えてくれたんやろな。
大学卒業を間近に控えた春、釣狐を披いた秀ちゃんが、プロポーズしてくれた。
自分の人生をかけて、ウチ一人を大切にする覚悟を見せるために…
『笹森の長男の嫁』いう、絶対に揺らがへん立場を与えてくれようとしはってん」
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