理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~
「葉子さん、あの…
辛いことまで、お話させてしまって、すみません」

私が頭を下げると、ホッとした表情になり…

「逸晴くんと…仲良ぅしてな?」

念を押すように、ジッと私を見つめた。


私にそんな大それたコトが出来るなんて思わないけれど、なんだか頷かないワケにはいかないような雰囲気で…
その雰囲気に飲まれるようにコックリと頷くと、安心したのか、

「そろそろ秀ちゃん、帰ってくるわぁ。
逸晴くんも、そろそろやない?
駅まで迎えに行こ?」

穏やかな微笑みにウキウキと弾んだ声は、いつもの葉子さんに戻っていた。


「いえ、まだ連絡も無いんで、駅ビルの中ブラブラしながら時間を潰します」

「そぉお?」

そう言って二人で席を立ち、

「また一緒に遊びましょ。絶対よ!」

ヒラヒラと手を振りながら駅へ向かう、葉子さんを見送った。



「…ふぅ」

化粧室へ向かい、鏡に写る自分を見つめる。

結局…
葉子さんの話からは、誰も悪くないどころか、皆それぞれに傷ついたコトが伺い知れたけれど…

イッセイと優香さんは、嫌いあって別れた訳じゃないってコトと…
『つりぎつね』っていうのが、何かすごいものらしい…ってコトしか分からなかった。


『どんな顔して、イッセイに会えばいいんだろう…』

考えてみても、答えなんか見つかるはずもなくて…
そもそも、イッセイが話してくれたわけでもない話を、本人にするワケにもいかない。
確かめてみたところで、私には何の関係もない話だと、突っぱねられればお終いだし…
ウザイ女だと、見限られるのも恐い。


私に出来るコトは一つだけ。
イッセイの言葉しか信じないコト。

そう心に決めて涙で崩れたお化粧を直し、笑顔を作ってみる。

『大丈夫、ちゃんと笑える!』
そう自分に言い聞かせて、駅へと歩き出した。
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