理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~
「アミューズ・ブーシュで御座います。

こちらから順に…

マッシュルームのサラダ ピクルスのジュレ 真鯛の薄切り。
トウモロコシのクリーム スーズの香り。
パースニップのシャンティ 大根とイクラ添え。

で御座います」

「アミューズ・ブーシュって、さっきのアミューズとは、どう違うんですか?」

そう口にすると、ウェイターさんよりも早く口を開いたイッセイが…

「アミューズは、居酒屋のつきだしと一緒や。

ここでは、アミューズ・ブーシュって呼んでるけど…
元々は、アミューズ・グール言うて…
直訳すれば『お口喜ばせ』ってコト。な?」

イッセイがウェイターさんに目配せすると…
ウェイターさんも『正解』と言うように、ニッコリ微笑む。


「俺かて、これ位は答えられるんやから、俺に訊いて。
やっと帰ってきたんやから、他の男や無ぅて俺と話をして」

だだっ子みたいなスネた顔に、思わず…

「かわいい」

と笑うと…

急に立ち上がったイッセイが、私を上から見下ろし…
そのまま口づけてくる。


「んんっ!」

背中を叩いて抵抗してみても…
舌は深く、深くに入ってきて、逃げ場はない。


躰から抵抗する力が抜けると、唇も離され…

「かわいいだけじゃ、物足りひんやろ?」

ニヤリと笑うと、何事もなかったかの様に食事を再開し…
ウェイターさんも、何も見てないといった様子で、給仕を続けていた。
< 135 / 151 >

この作品をシェア

pagetop