理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~
唇を甘噛みするように、甘く、優しく、熱い吐息を吹き込まれて…

彼の熱っぽく潤んだ瞳に、吸い寄せられるように、彼の胸元をに添えた指先に力が籠もる。


「そのまま、顔をうずめてて」

耳元で囁かれ…




突然、




「大丈夫ですか?
すぐに運びますからね!!」

周りに聞かせるかのように、大きな声をあげて、ひょいっと私を、お姫様抱っこすると…

「すいません、通して下さい!!
急病人です!!」

と言いながら、スイスイと人波をかき分けながら、進んで行く。



『関係者以外立ち入り禁止』

と書かれた、通路横の扉をくぐり抜け…

更に、いくつもの扉をぬけ…

辿り着いたのは、畳が敷いてある、楽屋らしい雰囲気の和室。



彼は、明かりをつける間も惜しむように、照明スイッチすら探さず…

優しく畳に降ろした私に、覆い被さるように抱きしめる。


それは、さっきまで壊れ物を抱えるように…

優しく、優しく、お姫様だっこした腕とは思えないほど…

きつく、強く、抱きしめられる。



『私を求めてくれてる』
って…

自惚れなんかじゃなく、実感できるほどに、長く、強く。



ようやく抱きしめていた彼の腕が緩むと…

入れ代わるように近づいてきたのは、唇。


ほんの数分前に初めて触れ合ったハズの唇なのに…

まるで、何年も触れていなかったかのように、懐かしい思い出が過ぎりそうな、優しいキス。


チュッっという音と共に離れそうになる唇は…

顔の向きを変えながら、再び唇を追いかけてきて…

遠慮しがちに、表面を浅く重ね合っていた唇が…

だんだん深く重なり合い…

慈しむように、彼の舌先が、私の唇を撫でた。


彼の舌は、私の舌を誘い…

臆病な私の舌が戸惑うのを…

何度も根気よく呼び寄せ…

彼の元へと向かわせる。


「んっっっ」

遠くに響く、甘い吐息が…

互いの区別もつかないほどに…

ゆっくり、ゆっくりと、とろけていく。
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