理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~
どれ位の時間が過ぎたのか…


5分なのか、1時間以上なのか、それすらも分からない程…

ううん、考える間を与えないほどに繰り返される、甘美なキス。


お互いの唇の間から漏れる、熱い吐息や甘い水音さえも、絡め捕ってしまうかのように…

次のキスに飲み込まれてしまう。



それなのに…

キス以上を求めようとしない彼の手が、もどかしくて…

『もっと私を欲しがって…』

塞がれたままの唇の代わりに、熱っぽく潤んだ瞳に気持ちを込めて見つめる。



やっと離れた唇に、寂しさを覚えながら…

見つめ合ったまま、逸らせない、視線。



もう一度、唇が重なろうとした、その瞬間…



突然、ガチャリとドアが開く。



バタンっと、勢いよくドアが閉められたかと思うと…

「アホッ!!
何、しとんねん!!」

言葉と同時に、『スパーン』という音が聞こえたかと思うと、彼の頭上に掌が降っていた。


「痛った!!
ちょっと手加減しろよ」

「アホ。
手加減したったから、パーなんや。
本気やったら、グーやで」

ぐっと拳を作ってみせた、突然の乱入者の男性は、彼と同じ家紋が入った羽織袴姿で…

おそらく同じ役者さんだろうというのが、見て取れる。


「さっ、行くで」

グイッと彼の腕を引くと、

「待っとくれ。
すぐに向かうさかい、先行っといて」

そう言いながら、掴まれた腕を振りほどく。


「ホンマやな?
何時までもイチャついてると、次はグーやで」

拳を見せ、ニカッと陽気な笑顔を見せた男性は…

「急に割り込んでしもうて、えらい失礼しました。
宜しかったら、この部屋、身支度、整えるのんにでも使うて下さい」

スッと、見惚れるほど綺麗な御辞儀をして、部屋を去って行った。
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