理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~
体を起こして座ったまま、呆然とその様子を見ていた私に向かって…

「ゴメン…
あれ、ウチの兄貴」

照れ隠しなのか、ポリポリと額を掻きながら、そう言った。


「おっ、お兄さん!?
お兄さんに、あんなトコ見られたの!?」

一気に赤面して、慌てふためく。


「心配せんかてエエ。

見られたんはキスだけやし、それ以上は、こないな所では…なぁ?」

肩をすくめて『まさか』をアピールする彼。


「こんな所って、あなたねぇ!」

『こんな所に連れ込んだのは、貴方でしょ!』

と、言おうとしたのに…

「えっ!?
場所は気にせぇへんタイプなん?
以外やなぁ~。

せやけど、そういう積極さ…
嫌いやないけどな」

ニヤリと笑うから、また赤面してしまう。



「ああっと、ホンマにもう時間が無いな。

兄貴も言うてた通り、この部屋は好きに使てかまへんから」

パチリとスイッチが入る音がして、部屋が明るさに包まれる。


眩しさに目を細め、パチパチとまばたきすると、くっきりと彼の姿が浮かび上がる。


180cmを超えているであろう長身。


サラサラの黒髪。


まるで漆を刷毛で塗り込めたような艶のある、黒目がちで、涼やかな目元。


スッと鼻筋が通った高い鼻に、薄く色づいた唇。


凛とした佇まいと、独特のオーラが、伝統芸能の世界に身をおく者としての風格を醸し出している。


『…こんな素敵な人と、キスしちゃったんだ』

そう思った瞬間、また顔が、火がついたように赤くなる。


そんな私の様子に彼は…

「何や?
ホレてしもたん?」

と、イタズラっぽく笑う。


「ほ、惚れてなんかいません!」

恥ずかしさで、言い過ぎたと反省するほど、思いっきり否定したのに…

「そうか。
ほな、これから惚れるトコやねんな」

なんて、サラリとかわすから…

調子が狂って、口を噤んでしまった。
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