理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~
…なんだかまるで、嵐が過ぎ去ったみたい。


ふふっと笑いながら、立ち上がろうとすると…

膝丈のオレンジ色のシフォンワンピースの裾が、15cmはズレ上がっていて、目を見開く。


「み、身支度って、こういうこと!?」

お兄さんにも見られたなんて、恥ずかしい!!


慌てて立ち上がって、裾を直す。


ついでに洗面台を覗くと…

ファンデーションはヨレヨレ、リップグロスは唇の輪郭をはみ出し…

髪の毛を留めていたピンも、だらしなく毛先に絡みついているだけ…

という、大惨事。


「ヤダもう。
なにコレ!?」

急いで髪をセットし直し、メイクを直す。


それにしても、『ホレろ…』だなんて、凄い自信。


役者って、皆ああなのかな?


『顔がよくて連れて歩くのに丁度いい』

と、自分のコトを話していた洋介を思い出す。


!!!!!っ私!!!!

…私ってば、何してるんだろう。


一昨日、失恋して、昨日サヨナラメールしたばっかりなのに…

今日はもう…

初対面の男の人とキスしたなんて。



ブルブルと顔を横に振り…

『違う、私はそんなに軽い女じゃないはずよ!』

そう思うのに…


…ああ、アレだ!

あの瞳がいけないんだ。


まるで吸い寄せられるように、目が逸らせなくなって…

見つめられると、甘い熱で体が痺れて、流されちゃう。


…あれはきっと、伝統芸能の家に伝わる、由緒ある魔術か何かに違いない!!


そう思いつく頃には、お化粧直しも終わり、楽屋を出ようと立ち上がった。
< 42 / 151 >

この作品をシェア

pagetop