理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~
ドアノブに手を伸ばすと、タイミングよくノック音が響く。


ここは楽屋だというのに、甘えて長居し過ぎたと反省して、慌ててドアを開け…

「すみません。ちょっとお借りしてました。
今直ぐに出ますから」

そう言って、頭を下げると…

「いえ、この部屋は、貴女の控え室としてお使い頂いて結構です。

私は、こちらをお届けに来たまでです」

袴姿の男性が、四つ折りの白いメモを両手で差し出す。


「ありがとうございます」

お礼を言って受け取ると、丁寧な御辞儀をして、去っていく。


誰からかを確認しなくても…

この部屋に居ることを知っているのは、イッセイとお兄さんだけ。


廊下で読むのもどうかと思い…

開演時間も迫っていたので、ひとまず、自分の座席へ向かうことにした。

彼…
もとい、イッセイの胸に抱かれて…

ヒョイヒョイとくぐったはずの扉は…

一人になると、道すら分からなくなり、キョロキョロしながら、なんとか抜けることができた。


エスカレーターを横目に進みながら…

『ココで出逢ったのよね…』

とか…

『ココで抱きしめられちゃったんだ…』

『しかも、キスまでしちゃったし…』

なんてコト考えて、赤面しつつもニヤけてしまう。



やっと辿り着いた客席のドアを抜け、座席を探して座る。

自販機で買っておいたペットボトルのお茶を飲み、さっき受け取ったメモを開く。


【G-6に移動すること。

0×0-××××-××××
からの着信があったら、出ること。

京都ブランホテルのBARで22時に。

逸晴】


と3つの用件が書いてあった。


とりあえず、大急ぎで2階席から1階にかけ降りると…

1席分だけ空いていた、G-6のプレートが埋め込まれた、中央左通路側6列目に座る。


急に舞台との距離が近くなったコトで…

こんな良い席に移動させてくれたり、さっきの楽屋を融通してくれたあたり…

彼は、そこそこ有名人なのかもしれない…

なんてコトに、気づく。


もう一度お茶を飲もうと、トートバックの中を覗けば…

入り口で貰ったパンフが目に入り、パラパラと、めくってみた。
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