理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~
「いらっしゃいませ」

3人のバーテンダーが、カウンターの中で頭を下げて下さる。


カウンターに向けてペコリと頭を下げ…

キョロキョロと辺りを見渡し、イッセイの姿を探すけれど…

まだ来てはいないみたい。



「マティーニ、下さい」

バーテンダーに告げながら、入口が見やすいカウンター席に腰を下ろす。


心地良いジャズが流れる店内にシェイカーの音が響く。


落ち着いた雰囲気の店内で、私だけが落ち着きなく、入り口に何度も目を向けている。


たった1秒すら永遠に感じられるほど、時計の進みは遅く、

『本当に彼は来るの…?』

さっきから、同じ疑問ばかりが頭を廻っていた。


「お待たせしました」


スイッと出されたマティーニを、一気に飲み干し、おかわりを頼む。


早く酔ってしまいたい。


シラフじゃ、この緊張感に耐えられそうもないから。


2杯目に口を付け、今度はゆっくりと味わいながら、これまでのことを振り返ってみた。



洋介を思い出してチクリと痛む胸は…

イッセイを思い出す度に穏やかな気持ちへと変わり、私の心を解してくれる。



22時10分を過ぎた頃、彼の姿が見えた。


声をかける間もなく…

彼の瞳は、しっかりと私を捕らえ…

目を見つめたまま、一歩ずつ近づいてくる。


決して逸らさずに。


そのまま近くなる距離に、ドキドキしていると…

「遅くなってゴメン」

言うのが早いか、キスが早いか…

唇の中に、言葉が押し込まれた。
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