理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~
「美味し~いっ!!」

もう何度目かの私のその言葉に、イッセイは呆れたように息を吐く。


初体験の、ぶぶ漬けバイキングでは…

ベースになるご飯を、白米か雑穀米か選択して、30種類以上のお漬け物や、佃煮を自由に選ぶ。


それから、緑茶かほうじ茶を選ぶと、御味噌汁と冷や奴が運ばれてくるシステムだった。


「ホンマ、旨そうに食べるなぁ」

緩く微笑む、イッセイに…

「だって、本当に美味しいよ」

と、素直な感想を口にする。


だって…

温かいご飯のままでも、お茶漬けにしても美味しい、お漬け物たちの虜になっちゃったんだもん。


「ぶぶ漬けなんて…って、怒るかと思うたけどな」

「なんで?
お漬け物は、立派な京料理だよ。

見た目や値段だけで、食べるものを決めてたら
、せっかくの美味しいもの、見落としちゃうじゃない!!」

『自分で案内しておいて、怒られるのを想像するなんて、おかしな話』

そう思いながら、大好きなナスのお漬け物を食べると…

幸せな気持ちが広がる。


ほら、やっぱり、美味しさの基準は値段じゃないよ。


「買って帰りたいけど、日持ちしないもんね…」

そう呟くと…

「そのうち毎日、食べられるようになるやろ」

イッセイがニッコリ微笑んで、励ましてくれるから…

『そうか!
自分で漬けられるようになれば良いんだ』

と思い、微笑み返す。



「御馳走様でした」

満足しきった、ニコニコ顔の私に…

「喜んで貰えて良かった。

…まさか、5杯も食べるとは思わんかったけどな」

と、笑うイッセイ。


一回り大きくなったお腹を撫でて…

再び石畳の坂道を歩き始めると…

日本髪に白粉、着物にだらり帯姿の女性を発見する。


「…ねぇねぇ、アレって舞妓さんだよね!?」

初めて見る舞妓さんに興奮して、イッセイの腕を引っ張ると…


「アレは、偽物や。
観光客の体験やろな。

本物やったら、こんな日中に、こないな所には来ぉへんで」

私と同じように勘違いした人々に、取り囲まれて写真を撮られている様子を気遣ってか、肩を抱き寄せて耳元にコッソリ囁かれただけなのに…

ゾクリと背中に快感が走り、慌てて距離をとる。


けれども…

引き留める様に伸ばした腕が、私の手を掴み、
離れるコトを許さない。


結局は、そのまま手を繋がれて、再び坂道を登るコトとなった。
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