理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~
「…清水寺って、お寺が一つ建ってるんだと思ってた…」

お財布をしまいながら、朱色の門の先に広がる、広大な敷地に目を奪われながら…

無知な自分を、恥じる。


「よそに住んどったら、そうかもな。
俺らは、たまたま小さい頃から、よう来てたけど」

気にする素振りもなく、サラリとそう言った、イッセイ。


「学校行事?
それとも家族で、お休みの日に?」

ちっちゃなコドモのイッセイは、どんなだったんだろう?

ニヤニヤしながら想像していると…

「仕事で。
ココに舞台あるしな」

意外な返事が返ってきて、驚く。


「それって、有名な『清水の舞台』のコト?」

「せや」

「飛び降りるだけじゃないんだね」


へぇ~っと感心する私を見て…

「ぶっっっ。
いや、むしろ、飛び降りる所ちゃうし」

吹き出したイッセイは、苦笑いで…

きっと、私の無知ぶりに呆れただろうな。


シュンと小さくなって、俯く私に…

「笑わせてくれて、おおきにな」

繋いだ手を口元に引き寄せて…

私の手の甲にチュッとキスをする。


「ちょっ、何するのよっ!」

「えっ?よう分からんかった?
ほな、もう一回」

そう言って、口元に寄せて…

チュッと手の甲にもう一度キスすると思いきや…

唇をつけたまま、舌先でねっとりと舐め、それから唇をすぼめて吸いつく。


「ちょっと!」

グイッと手を引くと…

「残念。
もうちょっとで、シルシが付いたのに」

ペロリと舌を出す。


「こんな目立つ所に付けないでよ」

頬を膨らませる私に…

「目立たん所ならエエんやな?」

ニヤリと笑うイッセイ。


慌てて首を振るも…

「俺も見えへん所やったら、大歓迎やで」

耳元で低く、甘い声が響き、また顔が赤くなるのを感じる。


「そのアヤの顔みたいに…
朱色に塗られた、さっきくぐった門は…
通称、赤門。

正しくは、仁王門って言うんだ」

私の反応をからかってるのか…

私ばっかりが意識してるのか…

イッセイは、ケロッとした表情で手を引いて、歩き続けた。
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