理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~
「ココが本堂の中でも、最も有名な『清水の舞台』や」

本堂から張り出した舞台は、スベスベとした木の感触が足裏に伝わる。


飛び降りる勇気は、無いけれど、そぉっと下を覗くと、思いのほか高い。


「ココ、こんなに高いの?
こんな所で、お仕事なんて怖くないの?」


「舞台の高さは31mあんで。

確かに、あの三重の塔よりは高いけどな…
ココから京都市街が望めて、景色は最高やろ?」

風を浴びながら目を細めて、眼下を見渡す、イッセイ。


「だって…所々、床が軋む音がするよ。

広さはあるかもしれないけど、こんな所で狂言なんてできるの?」

考えただけでも、躰がブルッと震える。


「舞台の幅は18m、奥行きは10m。
十分、小舞だって舞えるし、トンボだって返れるで」

そう言うと…

ヒラリとイッセイが、バク転をしてみせる。


「な?」

そう言って笑顔を見せたイッセイは…

あの舞台で魅せた、青空が広がるかの様な、爽やかな魅力に溢れていた。


驚き…

目を見開き…

見惚れるだけの私の代わりに…

周りの観光客から、拍手と歓声が上がる。


拍手を送る人々に、イッセイは丁寧に頭を下げ、笑顔で手を振ると、空いている反対の手で私の手を握り…

「そう言えば、この舞台…
こないに広いのに、18本の太い柱に、139本のケヤキを組んであってな…
釘は一切、使われてへんのや」

その言葉に、日本建築の素晴らしさを感じるけれど、ギシリ、ギシリと軋む床に隠しきれない不安が、私の脚を本堂へと戻すのを…

いたずらっ子のような表情で、イッセイはケラケラと笑っていた。
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