理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~
恋占いの石を離れ、地主神社でのお詣りも済ませ、

「せっかくだから、縁結びの御守り買ってく?」

イッセイに、そう尋ねてみると…

「いや、エエよ、もう。

御縁は十分にあったし、これ以上はもう要らん。
むしろ、次を考えなアカンような状況がくるやなんて、ゾッとするわ」

そう言って、肩をすくめて笑うイッセイの瞳は…

揺らがずに、真っ直ぐで…

残酷な美しさ。


…そうだよね。


私が、余計なお願いなんかしなくったって、イッセイみたいな立場の人には、もう…

そういう人が、決められているんだよね。


そして…

…イッセイも、その女性を受け入れているんだ。


ズキッと一瞬、胸が痛んだけれど…

そんな資格、私には無い。


イッセイに、気遣わせてしまわないように…

上手く出来たかどうかは分からないけれど、笑顔を作ってみせる。


スッと伸びてきたイッセイの腕に包まれた瞬間…

思わずイッセイの背中に、腕を回してしまう。


今だけの関係なら…

今だけなら、甘えても良いよね?


ジッと見つめ…

「キスして」

と言って、目を閉じる。


ギュッと抱きしめられた、イッセイの腕に力がこもり…

後頭部から背中へと、優しく撫でられる。


きっと…

さっきの笑顔が歪んでいて、私が哀れに思えたのだろう。


優しく唇を寄せ…

まるで、私のセツナさを薄めるかの様に…

顔の向きを変えながら…

何度も何度も、優しく唇を重ね…

舌を絡め…

唇が離れてもなお…


長くて綺麗な指で、私の唇を撫でた。


「今夜の約束なんかすっぽかして、アヤを抱きたい」

そう言って、再び強く抱きしめるイッセイに…

「ダメだよ、約束は守らなくちゃ」

本当は『私も』と言いたかったのを飲み込んで…

両手でイッセイの胸を押して、距離を取った。
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