理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~
茶店を出て、お土産物屋さんをブラブラ歩いていると、涼しげな扇子が目に入る。


手に取って見てみようとすると…

「やめとき。
ちゃんとしたのん、見ぃに連れてったるから」

伸ばした手をグイッと引き寄せられ、腰を抱かれた。


『きっと仕事柄、いいお店を知っているんだろうなぁ…』

なんて、日本の伝統美だとか、巧みの技みたいな…

私みたいな一般人じゃ滅多に御目にかかれない逸品を想像して、

「うん、お願いします」

そう笑顔でお願いすると、イッセイも優しい笑顔をくれ、そのまま手を引かれて先へと進む。


初めは…
あんなに恥ずかしかった、イッセイと並んで歩くコトも…

たった数時間で、当たり前のコトに代わっていて…

我ながら、驚きの変化だと思うけれど…

イッセイとは…

『触れあっているコトが、自然なコト』

のように感じられるから、不思議。


見つめ合いながら、他愛のない会話を楽しみながら歩いていると…

唐辛子屋さんから出てきた、着物姿の綺麗な女性が…

「逸晴くん?」

すれ違いざまに、イッセイを呼び止めた。



「………優香…さん。

あの、えっと…
お買い物ですか?」

一瞬だけ…

驚いたような、焦ったような顔を見せたイッセイは…

直ぐに柔らかな表情へと戻ると、そう尋ねた。


「そう。父のお遣いに。

『ここの一味やないとアカン』
言うて、子供みたいに他のは食べへんの」

「へぇー。
それなら喜ばはるでしょうね」

「ええ。
そうやわ、近いうちに寄ってくれはる?
私じゃ『酒の相手にならん』言うて、つまらなそうでなぁ。
逸晴くんなら、喜ばはるやろうから」

「ほんなら、兄貴と一緒にでも、また寄らせて貰います。ほな…」

柔らかく微笑み合う二人の会話に、入り込む隙なんか、これっぽっちも無くて…

それだけで、二人が『ただの顔見知り』ってだけじゃないって…

オンナの直感で、感じる。


けれど…

何にも聞ける立場にない私は、結局…

肩を抱き寄せて歩き出す、イッセイに連れられ…

軽く会釈だけして、前を通り過ぎる。


彼女は、私が視界に入っていないかの様に、イッセイに対してのみ手を振っていた。


『あのヒト…
会話中に一度も、私のコト尋ねなかった…』

そう思い返すだけで…

急激に背筋が寒くなるような気がした。
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