理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~
「待ち合わせまで時間あるし、ドコか寄ってみたい所ない?」

誘ってくれたイッセイの言葉は嬉しかったけれど、昨日の狂言を見に行った楽屋で、恥ずかしい姿を晒してしまったイッセイのお兄さんに…

汗だくのままで会うだなんて、更なる無礼はしたくないから、

「強引に割り込んできた兄貴が悪いんやし、気ぃ遣わんでもエエんや」

と、眉を寄せるイッセイを宥めつつ、一旦ホテルに戻るコトにした。



ホテルに戻り、ホールを抜けてエレベーターに乗り込むと、迷わず最上階の一つ前の階のボタンを押すイッセイ。


私も自分の荷物がある部屋に戻る為に、その3つ下の階のボタンを押す。


「なんで?
ドコ行くつもりなん?」

二人っきりの静かなエレベーター内に、イッセイの少し不機嫌そうな声が響く。


「自分の部屋だよ。
汗かいたから、シャワー浴びて着替えてくる」

そう答えた私に、

「アヤの部屋は、こっちや」

自分の押した階ボタンを、トントンと指先で叩いてみせる。


「だって、荷物も着替えも、みんな置いてあるし…」

「分かった。
ほな、荷物を纏めて」

「無理」

首を横に振って渋る私に…

「なんでなん?」

益々、不機嫌になっていくイッセイ。


「イッセイは、今日を含めて後2泊でしょ?
私は後4泊するから…」

何度も荷造りしたくなくて、理由を説明するも…

「大丈夫や。
次はもう決めてあるし」

「へぇっっ!?」

予想外の展開に、素っ頓狂な声を上げてしまう。


「せやからもう、帰る部屋は俺と一緒や。
荷物運ぶのん手伝うたるから、一緒に取りに行く」

そう言った、イッセイに…

「ダメ!だめ!絶対に駄目!!」

と、手で制止ながら、首を振って念を押す。


「シャワー浴びたら、着替えて、荷物纏めて…
イッセイの部屋に行くから。

そしたらもう、ココには戻らない。
だから、部屋で待ってて」

今更だけど…

洋介との為に予約した部屋に、イッセイを入れてしまうのは、ルール違反の気がするから。


「ホンマに?」

嬉しそうな笑顔を見せる、イッセイに…

「本当だってば!」

もう一度、念を押すと…

「うん、ほな、大人しゅう待ってる」

ギュッと私を抱きしめ、唇を重ねてくる。


私も、イッセイの広い背中に、手をまわそうとすると…

唇を離したイッセイが…

「『シャワー浴びたら、イッセイの部屋に行くから、待ってて』
やなんて、えっちくさ~」

ニヤリと笑う。


「ちょっと!
勝手に都合よく編集しないでよ!」

ドンっと突き飛ばし、丁度着いたエレベーターから、フロアへ飛び降りる。


「あははは」

笑いながら、投げキッスをするイッセイを乗せて、扉が閉まった。
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