理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~
「昼間はエライすんまへんどした。
急に無理言いましたのに、融通していただいて、ホンマおおきに。

お会いできるのん、楽しみにしてましたんや。

改めて、御挨拶させて頂きます。

逸晴の兄の秀晴です。
こっちは、妻の葉子です」

覚悟していたはずなのに、やっぱり…

本家の長男夫婦にお会いするなんて、恐れ多くて…

怖くて…

ひれ伏したいのを必死に堪えて、頭を下げ、なんとか目線を上げる。


と…

奥様として紹介された女性は…

さっきの唐辛子屋さんから出てきた女性。


思わず目を見開いて、声もでないまま、イッセイへ視線を飛ばす。


「兄貴、葉子さん。
こちらは、坂本彩さん。
俺の運命の人や」

私の視線をどう受け止めたのか、ニッコリと笑みを浮かべ…

冗談とはいえ、恥ずかしげもなく私のコトを持ち上げて紹介した。


「…そうか。
彩さん、飲み物は、どないしはります?」

秀晴さんもまた軽く流して、ドリンクメニュー表を開いて渡して下さる。


「俺、生ビール。アヤは?」

「ウーロン茶で…」

そう答えると、篠原さんが頭を下げて戻って行く。


「そう言えば、清水坂の唐辛子屋で、優香さんに会いましたよ」

イッセイが口を開くと…

「また、お父さんのワガママが出はったんやわ~」

困ったという風な表情の葉子さん。


「アヤ。
さっき会うた優香さんは…
こちらの葉子さんの双子のお姉さんや」

「えっ!?」

それなら、あの言動にも納得がいく。


友達ならまだしも…

ただの妹の夫の弟が、見知らぬ誰かと一緒でも、興味が無くて当然だし…

わざわざ訊くには距離が近すぎて、ネタにもならないだろうし。


葉子さんが、ウフフと柔らかく笑って…

「ビックリさせてしもたんと違う?

小さい頃から、両親すら見分けがつかへんほど、似てたんよ。

おじいちゃん達もよう、間違はったから…
苦手なお稽古事は、身代わりし合うたり…

学校の教室なんかも、入れ替わっても先生にも気付かれんかったし…」

懐かしさを楽しむ様に目を細めると…

「せやけど、俺は今まで、一ぺんも間違うたこと無いで。
愛の力や!!」

そう言って秀晴さんは、葉子さんを抱き寄せて、軽くキスをした。


唖然とする私に…

「兄貴ら、年中こうやから…
ゴメン、慣れて。

付き合い始めた17才からずっとこう。
呆れるやろ?」

イッセイはそう言ってため息をついていたれど…

たった一人を大事にして…

結婚しても、ずっとラブラブなままなんて、羨ましかった。
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