中指斬残、捌断ち儀


その腕には、顔の上半分にお札を張り巡らせた赤子を抱えて。


『この赤子の目は、地獄に通ずる』


村人を集めた住職は言った。


『その目を見た者は、皆すべからく地獄に招かれ、自害しよう』


ならばそんな子は殺せと誰かが言った。


『できぬ。地獄に通ずるこの子を殺せば、災いがこの世に溢れるだろう』


なればの話、地獄を飼い殺すしかないと住職は言う。


その寿命がなくなるまで、生かしておこうとした決断に、『では、誰が育てるのか』との擦り付け合いが始まったが、結局は飼い慣らせるその住職が適任であると話はまとまった。


――さて、おぞましい目を持つこの赤子だが、もう二度と災いを振り撒かないように寺の物置に隔離をされた。


< 1,001 / 1,127 >

この作品をシェア

pagetop