中指斬残、捌断ち儀


「渉くんには、“一緒にそこへ来てもらいたい”んだよ」


さざめきさんが言いたいことが分かり、目を丸くしたところで体が離れた。


色んな場所にあるというさざめきさんの住処。そこの掃除を頼むとはつまり、“僕もその場所に行けるんだ”。


「おやつは300円まで。自由行動は一時間だけだよ」


「保父さんですか」


もー、と粋な計らいをしてくれるさざめきさんに怒りたい気分になった。笑いながらだけど。


学費が稼げる上に、色んなところに行きたいという僕の願いも叶えてくれるだなんて、優しすぎるだろう。


「虫が良すぎますよ、僕にとって」


「僕にとっても都合が良いんだ。真面目な助手が必要だったから。――やってくれるね」


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