中指斬残、捌断ち儀


伯母さんにつながらなかったらを繰り返すあたり、五十鈴さんは見越していたんだろう。僕が伯母さんに連絡しないということを。


言葉では厳格さを漂わせるが、本音は、『困ったことがあれば、すぐに連絡しろ』と言っているように思えた。僕の主観でしかないけど。


本音では、ノート上に書かれた番号を見て、『五十鈴さんと毎日話せる』と喜ぶ僕だけど、五十鈴さんの口振りから『安易にかけてはならない』と知る。


「寝る邪魔をして悪かったな。お前が寝たら、私は行くが……余計、酷くなったら無理をするなよ」


無理をしないがために何をすべきかの意思を僕に預けた五十鈴さんは、僕の額にあるタオルをひっくり返した。


「おやすみ、渉」


子守唄のような響きに、同じ言葉を返す。目を閉じても、近くには五十鈴さんがいると安心できた。


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