中指斬残、捌断ち儀


――


僕は虐待を虐待(犯罪)だと思っていなかった。


苦しいことは、僕が悪いからされる躾であり。

放置されることは、僕が一人でもやっていけるほど成長した証であると思っていた。


五十鈴さんには辛かった苦しかったと言っても、心では、『僕がきちんとしていれば、こんな思いをしなかったんだ』と一度たりとも僕は伯母さんを責めたりしなかった。


憎んだことは……たった一度だけ。中学校に上がってから一度だけあったけど、その憎悪すらも僕自身への“くびり”となった。


僕は僕を責めている。独りよがりに、自分勝手に、そうあるべきだと、責めていた。


周りからしてみれば、そんなことはないと言われるのだろうけど、“そう言われるからこそ、僕は本音を誰にも出さなかった”。


そのことについては五十鈴さんも例外じゃないし、僕の味方たる五十鈴ならば尚更だった。


僕が僕を卑下しているだなんて、僕を大切に考えてくれる人からしたら、憤怒ものだろう。


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