中指斬残、捌断ち儀
――
「なに、なんっ、何なのよっ」
突然として笑いだした渉に喜美子は水が入ったままのバケツを投げつけた。
的も弾も大きく当てやすいものでも、バケツは渉から逸れて隅に置いたコタツ布団を濡らしていた。
ごろんと転がるバケツの口がこちらを覗き込み、そんな空洞の闇と似たような目をした渉は喜美子を見ようとはしない。
「うるさいっ」
叩く手を出そうとしたが、渉は叩けない。――ああ、だからか。
「叩けないから悪いのねっ。痛い思いしなきゃ覚えないでしょ、ねえ、違う!?」
言葉の暴力だなんて痛くはない。痛くなくなるほど与えてきた。かさぶたを重ねた皮膚が痛みを感じないように。
それでも“ダメな子”だったから、言い聞かせたかった。