Affair
そう言いたいけど、飢えた野良犬のようになっている夫に何も返せない。

今にも夫に喉を噛み切られるんじゃないかと思うと、怖い。

「――奈津…」

夫が私の名前を呼んだ瞬間、
「い…嫌ッ!」

ドン!

私は思わず夫を突き飛ばした。

「…奈津?」

突き飛ばされた夫が、私の方を向いて驚いている。

ヤだ…。

怖さのあまり、思わず突き飛ばしてしまったことを反省した。

「――ご、ごめんなさい…。

あなたがまるで…」

飢えた野良犬みたいで怖かったなんて、そこまで言えなかった。
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