-Vermillion-

加奈が帰ってすぐ、

真朱がバイトから帰ってきた。

制服姿の私を見て、軽く頭を撫でる。


「晩飯はパスタな。
 荷物置いてすぐ作るから、
 先に風呂入ってな。」


バスタオルを持って洗面所に行くと、

真朱が手洗い嗽をしていた。

私は構わず服を脱ぐと、

洗濯かごに放る。

それを見て、

真朱は呆れたように言った。


「あのさ、せめて俺が出るまで待てよ。
 すぐなんだから。」

「どうして…?いいじゃない…」

「まぁ別にいいけど。
 俺が兄ちゃんで本当良かったな。」

「ふうん、変なの…」


(夕方のニュースです。
 本日午前五時頃、余山市内で
 女性の変死体が発見されました。
 警察によりますと、
 被害者の死因は共に失血死であり、
 解剖の結果体内の75%の血液が
 無くなっていた事が判明。
 医学関係者による
 連続殺人事件の可能性も――)


「止めよう。飯が不味くなる。」

「美味しいよ…いつも…」

「ありがとな。映画でも見ようか。」

「風の谷の姫様がいい…」

「懐かしいな!何処に置いたっけ……」


(――あの子は谷を守ったのじゃ……)


隣で涙を堪える真朱を見て、

この映画を選んで

本当に良かったと思った。


昔はよく

家族四人で一緒に映画を見た。

真朱は涙脆くて、いつも泣いていた。

あの頃と変わらぬ一面を見ると、

何だかとても安心する。


「ねぇ真朱、
 好きな人とか、いないの…?」

「急にどうした?」

「今思えば、恋愛の話とか、
 聞かないから…」

「あぁ…高校の時
 一年半付き合った彼女がいたよ。」

「今、好きな人は…?」

「今かぁ、そうだな……
 朱乃、かな。」

「そういう冗談、他の人には、
 言わない方がいいよ…」

「冗談、か…」

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