愛の囁きを[短篇]
あの日から1週間。
壱とは口すら利いていない。
学校に行く時だって
学校にいる時だって
私が避けているから会うことがない。
こんなに話さないのなんて生まれて初めてかもしれない。
こうやって、忘れていけるかな?
18年間の思いでも一生のうちではほんの少しに過ぎない。
いつかは、忘れることが出来るよね?
そんなある日。
「穂波、壱君の家に回覧板届けてくれない?」
「…!む、無理!今、忙しいから…」
リビングでテレビを見ていた私に母が回覧板を渡す。
せっかく会わないようにしてきたのに、これじゃあ意味がない。
必死で断る私を見て、母が呆れたように私の手から回覧板を取り上げる。
「分かったわよ。…もう、」
「ごめんなさい…」
だって、だってどうしても行きたくないんだもん!壱に会いたくないんだもん。
火をつけていた鍋を止めて、
お母さんが家を出て行った。
…良かった。
そう思いながらテレビのチャンネルを回そうとした。