愛の囁きを[短篇]
そのまま何故か抱き寄せられる私。
「い、壱!?」
「言わせねぇよ。んなこと。」
そうやって壱はまた、私のことを使うの?
ただの暇つぶしに私を利用するの?
期待しちゃ駄目。
傷つきたくないもの。
ぎゅっと抱きしめられている私の体。
壱の体温が無性に懐かしく感じた。
「は、離してよ…」
「離さねぇ。お前、また逃げるだろ。」
いつもと変わらない、強い口調で言う壱。
「……!」
ドンドンと叩く私の手を止め、ゆっくりと私を見下ろした。
「…んで、泣いてんだよ」
そして困ったような声が私にかけられ、溜まっていた涙を優しく掬い上げる。
なんでこんなに優しくするの?
なんでそんなに悲しそうに私を見るのよ…