pierce,prince
「…帰んの?」
抑揚のない声に
ちょっとだけ心が震えた。
『…う…ん。』
引き留められたくなかったよ。
後ろめたくなる。
「なんで?」
思わず葵の顔を見ると
真っ直ぐな澄んだ葵の瞳が
あたしに突き刺さる。
『…あ…だって…』
「ん…?」
儚げに、微笑まないで。
…言えなくなる。
『だって…お父さんたちは
酔って話に熱が入ってるし…
なんか…することなくて…』
…ほんと。
でも、うそ。
「…なんだよ。」
『え…?』
少し照れ臭そうに笑いながら
葵はあたしとの距離を縮めてくる
「家にひとりでいるほうが
…することないと思うけど?」
今、葵の瞳に映ってるのは
…あたしだけ。
「…まだ、帰んなよ。」
葵に左腕を引かれた。
あたしは、また
切なくて…
葵のところに戻るの。