pierce,prince
葵に手を引かれ
連れていかれた先は
葵の部屋だった。
ぱたん‥とドアの閉まる音を
背後に聞くと、
葵は小さなため息を漏らした。
───‥あたしが…
気がつかないよう、そっと。
だけど、この手が繋がれた限り
あたしは葵から、目が離せない。
ううん、違うや。
あたしは何をしてても、
葵から意識を反らすなんて
できない…んだ。
自分ではどうにもできない心が
ざわざわと騒ぎ立つ。
「───‥海。」
葵の口から息に乗せた
透き通るような声が発せられた。
それは、涙が出てしまうくらい
美しくて───‥
それがあたしの名を呼ぶ
声だとゆうことに、
心が勝手に甘く震えた。
『‥あ、…おい…?』
それに比べてあたしの声は、
身震いするほどに気持ち悪い。
ぎこちない、声。
「見てみ…?」
すっと伸ばした葵の手の先、
そこに広がった夜空には
きらきらと輝く星と、優しい月。
「今日は…夜空がきれいだ。」
それは断じてあたしに
言っているものではないと、
わかっていても
勘違いしてしまいそうだった。
葵の声は、あたしを欺く──‥