女の隙間、男の作為

『紘太さんは、殊の外結城のことがお気に入りみたいだったからなー』

“俺が最後に余計なことを言った所為で結城が雁字搦めになってるんじゃないかって酔っ払うたびに五月蝿いから協力してみただけ”

なんて男だろうと思った。
松岡もさることながらかつて夢中になった男は最低最悪の自惚れ男だ。

『だからあたしに近づいたの?』

『まぁそうかな。結城が余裕ぶっこいて長年手を拱いているみたいだったから。
速攻で効果あったから俺もびっくりしたけど』

誰から順番に殴っていけばいいのかと真剣に考えていたところで、男の声が静かな会議室に響く。

『ごめん。俺はカノも結城に気持ちがあると思ってたから紘太さんに協力したけど、でもやっぱりアレはやりすぎた』

アレとはどれのことを指しているのだろう。
最初の飲み会の夜のこと?
この前の無理矢理のキスのこと?

どちらもすぐに消去してしまいたい記憶だし今でも不快感で一杯だけれども、怒鳴り散らす価値もないと思った。

『あれも計画のうちだったわけ?』

“随分楽しいお遊びだったのねー”

『カノには必要以上に手を出すなって言われてたけど、つい出来心で…俺も男ですから』

『やっぱり一発殴っていい?できればコウくんの分と合わせて』

カノには手を出すな?
なんでそうやっていつまでもあたしを所有物扱いするの?

あたしを捨てたくせに。
何を今更。反吐が出る。
やっぱり五発くらい殴ってやりたい。

でも何が気に喰わないって結局はあの男の言うようになってしまった自分だ。
あたしは結局、コウくんが可愛がっていた後輩に絆されて異例の抜擢を手放しで喜べないほどに大きな存在になってしまっていた。

松岡の存在がきっかけで長年アリエナイと思っていたはずなのに身体まで重ねる始末。

自己嫌悪に陥らずしてなんとすればいいものか。

“カノことがすきだから”

しかしよくもまぁいけしゃあしゃあとあんな台詞を大量生産できたものだ。
性質が悪いなんて言葉では到底片づけられないほどの下等生物。

すきでもない女をひたすら口説き続け、挙句の果てに寝込みを襲うだなんていったいどんな道徳心の持ち主だろうか。

『あたしがもしあんたに靡いたらどうするつもりだったわけ?』

“あぁ”と愉快そうに笑う男がいる。
次に同じ表情をしたら今度こそ確実にその顔を殴ろうと心に決めた。
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